添加物の講座 盛況 「食品の裏側から」
安部司さん開講 加工食品診断士 養成目指す
●「業界や消費者に 正しい知識を広げたい」
食品添加物の問題を解説した本紙生活面の連載「素朴な疑問-食品の裏側から」(2014年8月~16年8月)の筆者で食品ジャーナリストの安部司さん(65)=北九州市=が添加物や加工食品の知識があることを認定する資格を創設、養成講座を始めた。「加工食品診断士」という任意の資格だが、外食・食品業界などで活躍できる食のスペシャリストの育成を目指し、民間の食の知識の底上げにつなげたい考えだ。
東京都内で月1回開く講座は全8回で、修了後の試験に合格して資格を得られる。うち前半4回だけを受ける基礎講座も用意した。
前半の基礎は、添加物の使用目的、食品表示の問題、基礎調味料についてなど1回5~6時間をかけて体系的に学ぶ。後半の4回は、市販の着色料を使ったハムと無着色のものを比較するなど、製造に関わるより専門的な内容になる。
6月開講の講座には1期生として計約130人が集まった。特に基礎講座は、子育て中の女性が2割を超え、食品メーカー社員、飲食店経営者、医師など幅広い層が受講している。九州からも福岡県の5人など計9人が参加した。
受講料は全8回で23万7600円(基礎は10万8千円)と決して安くはないが、今月22日開講の2期生も計約60人が申し込むなど、食の安全に対する関心の高さをうかがわせている。
安部さんは総合商社で加工食品の開発などに従事する中で、販売最優先の業界の在り方に疑問を抱き退職。その後、無添加の食品開発や有機農産物の販売促進に携わった。計100回の本紙連載など執筆活動を通じて「添加物は安さと便利さをもたらした一方、代償として味覚破壊や日本の食の未来を脅かしている」と警鐘を鳴らしてきた。それでも「状況は悪化の一途をたどっている」との危機感から資格創設を思い立った。
1期生には、安部さんとの出会いを機に「安全な料理を提供したい」と10年前に飲食店を開業、改めて学びたいと参加した人もいる。堺市の「自然食カフェGRAN」など3店舗を経営する佃隆志さん(45)=熊本県出身。できるだけ添加物を使わず無農薬野菜を材料に料理を提供しており、11月には福岡市・大名にフランチャイズ店を開く計画。これまで同様、熊本県産の産地直送野菜などを使うという。
変わりつつある消費者のニーズを実感する安部さんは「より安全な商品提供が食ビジネスでも生き残る鍵を握る。同時に正しい知識を持った消費者の増加が社会を変える」と指摘。「食に対する鋭い判断基準を多くの人に身に付けてほしい」と話している。
=2017/10/18付 西日本新聞朝刊=